鏡子ママの思い 〜食と農 子どもたちの心・体・未来のために〜

          

子どもたちが笑顔で暮せる社会をつくりたい / 押田 鏡子

過去において、戦争とは無縁ではなかったし、未来において無縁であるという保証はない。戦後60年の歳月が流れようとしている今日、実際に戦争を体験した語り部たちは急激に少なくなりつつある。戦争を知らない私たちが、戦争を知らない子どもたちに、戦争の悲劇を伝えなければいけない。真実が私たちに届きづらくなっていることに不安を覚える。薄れかけた平和への願いを呼び起こすためにも、今、歴史を学ぶことの大切さを強く感じる。
1931年の満州事変が15年戦争の始まりであり、その後日本は軍国主義の道を突き進んでいった。1945年東京大空襲、沖縄地上戦、広島。長崎に原爆投下、この第二次世界大戦において、日本で約300万人、世界で約6000万人の尊い命が犠牲となる悲惨な結果になってしまった。1945年8月15日終戦という事実ではなく、その時人々は何を感じ、何を思い、何を考えたのか、その思いを引き継ぐ事が歴史だと思う。
「2度と戦争をしてはいけない。」人々の重いが集結し、その中で生まれたのが平和憲法である。
前文で「政府の行為によって再び戦争の惨劇が起こる事のないようにする事を決意し、主権が国民に存ずる事を宣言する」、9条で「日本国民は正義と秩序にたつ国際平和を心から願って、戦争や武力を用いる事は国々の間の争いを解決する手段として永久にこれを放棄する」とうたっている。


今、この平和憲法9条の「なしくずし的解釈」で武器を手にして、自衛隊が海外派兵されている。「世界平和への貢献」という美しい言葉に飾られて・・・。この動きに私たちはもっともっと関心をもたなければいけないと思う。日本はどこへ向かおうとしているのか。何より恐いのは、従わぬ「個人」を排除し、「国家」を優先する動き、その政権の危うさが社会に波及していく事である。戦争放棄、平和主義をうたった平和憲法、世界に類のない平和憲法で国際社会に日本という国を認めてもらった事実を忘れてはならない。この平和主義の精神を日本の誇りとして、世界に広げていくべきである。
現実のために理想をつぶすのではなく、理想に現実を近づける努力こそ必要なのである。平和は私たち自身が守り、作りあげていくものであることを再認識したい。日々の忙しさの中で、目かくし状態になっている私たち、人ごとと思いがちなこれらの動きも、いつの日かささやかな幸福を奪うことになるかもしれない。いのちとくらしは、その時々の政治や社会の動きに大きく影響をうけている。社会が大きく様変わりしていく中で、見極め、判断して、行動することが、私たちに求められていることであり、果たさなければいけないことである。子どもたちのために、安心して暮せる未来を残すために・・・。
21世紀的問題とされている、環境破壊、人口爆発、食料不足は地球的規模で進んでいる。ゴミ⇒ダイオキシン(環境ホルモン)⇒食物連鎖、CO2の削減⇒原発(プルトニウム)⇒プルサーマル計画、人口の爆発的増加・食料不足⇒遺伝子組み換え作物・遺伝子操作、生活の中にあふれる科学物質⇒細菌・科学物質過敏症、世界貿易機関(WTO)への加盟⇒輸入食品の増加・農産物の総自由化⇒日本農業の衰退⇒自給率の低下など。いろいろな問題がからみ合い深刻化している。豊かさを求めたはずの科学・化学の進歩は私たちの命を脅かすものになっている。子どもたちの健康を考えた時、食と農の問題を環境と平和の問題と関連づけて考えていくべきである。
人口の爆発的増加などによる食糧需要のひっ迫が予想される中で、食糧は自国で自給する体制が求められている。先進国のほとんどは、自国の農業を守るため、国民が飢えることなく生活していけるために基盤づくりしている。それに引き換え我が国は、農業を捨て(農産物の総自由化)国民の胃袋を他国にあずけたのである。工業社会への移行の過程で、日本ほど農業を軽視してきた国はない。農業を大切に思うことは、命を大切に思うことである。これ以上、食糧の自給率を下げることがは危険すぎる。食糧の戦略物資化という問題を忘れてはいけない。輸入食糧の4割をアメリカから買い入れているが、そのアメリカには、スーパー301条(不公正貿易国への対抗措置強化条項)、ウエーバー条項(自由化義務の免除)、輸出管理法(輸出制限措置)がある。食糧の安定供給(質と量)という視点に立って農業に向けた政策を強化する必要性を感じる。1億2千万人もの人口をかかえた日本が食糧に責任を持てない国でいいのか。国土の15%しかない耕作地をこれ以上荒廃させてはいけない。
就農者の高齢化が大きな問題である。生産の灯を消すことは、私たちの、そして子どもたちの命を消すことである。農業で生計を立てている農業者の問題としてのみ考えられてきた農業政策を、国民の健康問題として考えていくべきである。作る人の命(生活)を支え、食べる人の命を守る。生産者と消費者が向き合える農政でなければならない。今、食生活に何が起こっているのかを知ることが大事で、その上で国民の食と農がどうあるべきなのかを考えなければいけない。食糧は自国で生産するのか、外国に依存するのか。自由貿易、自由市場主義のもと、経済的効率が追求される今、農業は生態を破壊し、生命を与えるものから、生命を脅かすものへと変わりつつある。農業は「生命をはぐくむ」重要な食を生産していることを生産者も消費者も共通認識をもって行動していくことが大切である。


飽食日本でなぜ子どもたちが心身ともに病んでいるのか、問題の多い食生活の影響は大人より子どもが受けやすく、手軽で便利ということがもてはやされ、そういう食を求めたばかりに食品添加物・農薬などの化学物質を多く体内に入れることになる。こうした食生活の変化が大きくかかわっている。私たちの命とくらしを守るために必要な食糧とエネルギー、限りなくあるものと信じてか、それらに対しての危機感は無に等しい。私たちの身体におよぼす影響を考えると、とりかえしのつかないところまできている。化学物質・放射性物質を排除した環境を次世代を担う子どもたちに残したいという、私たちの思いとは逆行する動きばかりである。多くのものを犠牲にして進められてきた経済優先の社会が、犠牲にしてきた最たるものは「命」なのである。私たち一人一人の行動が社会を変え、子どもたちの命を守るのである。子どもたちの未来を奪ってはいけない。とつくづく思うこの頃である。子どもたちの明日がいい日でありますように。
犯罪の低年齢化・いじめ・育児放棄・幼児虐待など、ニュースを見ていると涙が出てくる。「キレる子どもたち」を生みだしたのは、私たちのつくり上げてきた社会のゆがみ。社会のストレスがそのまま、子どもたちのストレスとなり、想像もつかないような形で子どもたちの中で爆発している。子どもたちの心も身体もボロボロになっている。本気になって今、何かをしなければ、子どもたちは本当に大変なことになってしまう。どうして子どもたちがこんなに病んでいるのか、世の中の移り変わりの速さに、人間の成長がついていけなくなっているのでは、忙しすぎる日々の生活の中で大切なものを見失っている今の日本人、日本(社会)はどこを目指して進もうとしているのか。子どもたちに伝えるメッセージをもたない社会こそが、子どもたちの病める原因だと思う。健康な社会をつくるために、私たちのできること、しなければならないことは何なのか、真剣に立ち向かっていかなければと思う。子どもたちの笑顔を見続けるためには、私たちが行動を起こすことである。「イエス」「ノー」をはっきり言えることが大切で、そのためには常に正しい情報を得ることを生活習慣にしていかなければと思う。
大量生産、大量消費、大量廃棄の「急ぐ」社会から、「急がない」真のゆたか、ゆとりを実感できる社会へ。経済優先の社会の中で忘れてきた大切なもの、それが「何か」をようやくさがし始めた。体に優しい食べもの、自然とのふれあい、人と人の絆など、失い・崩れたものをとりもどすために動き出した。心ゆたかに暮せることが一番の幸福である。「地域の元気が、国を変え」、「女たちの元気が社会を変える」と私は強く思っている。できることから始めようと思う。


あるべき食と農の姿、その情報発信の場になればとの思いではじめた「食彩工房・美花夢」。「体にやさしく、おいしいものを届けたい」私たち家族が長い間あたためてきた夢がようやく形になりました。豊かな自然に恵まれた見晴らしのいい丘の上に、自分たちの手でコツコツと小さな工房をたてた。3年が過ぎ、ほんとうに大勢の人たちが美花夢を訪れてくれています。工房のそばに園芸好きの私たちが楽しみながら育ててきた「雲の上の花畑」が有ります。たくさんのハーブ・花・果樹・野菜たちが癒しの空間を演出。大自然の中での動・植物との触れ合いは、五感を刺激し、やすらぎや元気を与えてくれて、命の大切さを教えてくれます。小さな子どもたちをつれた家族連れが一番多く、若いカップル、熟年夫婦・友だち数人グループ、視察研修を兼ねた団体、キッズスクールの子どもたちの体験学習、ひとりきまま旅で訪れる人、様々な人たちとの出逢いが有ります。見知らぬ土地で、見知らぬ人との出逢いは、何故かここちよいもので、心にあたたかいものを残してくれます。社会の動きについて、食べもの・心と身体の健康のこと、子育てのこと、自分自身の生き方について、地域づくりのことなど、思う存分話をしていかれる。人里離れた見晴らしのいい大自然の中に身をおくと人間すなおになれるのか、今まで気づかなかった自分を見つけて帰られる人もいます。「元気をもらいました。」と大きく手を振って帰られる姿をみると「美花夢をやって良かった。」とこちらの方も元気をもらっています。ハートとハートのつながりが求められていることを強く感じる。特に、若ものたちが、自分の思いをさらけだせる場を、真剣に受けとめてくれる相手を求めています。
訪れるだけで元気がでる。そんなコミュニティ広場をつくりたい。牧場・美花夢・雲の上の花畑の周辺を利用してのプランを進めています。農村は生きる命(生命)に向き合える最高の場。私たちがもつ資格・勉強してきたこと(ハーブコーディネーター・ガーデニングコーディネーター・アロマセラピー・生涯学習1級インストラクター)を活かした、癒しと学びの体験コミュニティ広場をつくっていきたいと考えています。多くのことを体験して感動して欲しい。大自然の中でゆったり時間をかけて、愛情一杯に子どもたちを育ててあげたいですね。


地元でとれたものを、手間・ヒマを惜しまず作ること、素材のもつ本来のうまみを味わってもらうために1つ1つじっくりとまごころを込めてつくる。「いつもおいしいものをありがとう」と声をかけてもらえる仕事ができることの幸福を感じています。
作る人と食べる人がもっともっと近い距離になればと思う。自然発生的に「命のネットワーク」がつくられていくことを期待しています。これからも「食と農・環境と平和を結びつけた情報」を発信していきたいと考えています。知恵と力を出し合い、子供たちの明るい未来のために、頑張って行きたいと思っています。